「おのじ通信」Vol.56 2019年4月7日(森編集員)
先日、新元号「令和」が発表されました。『万葉集』の梅花の歌三十二首の序文からの引用でしたが、『万葉集』は、およそ1300年前に作られた日本に現存する最古の歌集です。
老若男女や身分の区別なく、さまざまな人の歌が収められています。時代を超えて私たちの共感を呼ぶ、珠玉の歌集とされています。
町田小野路霊園周辺の里山にも「防人見返りの道」と言われるスポットがあり、その昔、防人にかり出される夫を見送るために妻が詠んだ長歌が万葉集に残されています。
これを機に万葉集の魅力に少し触れてみたいと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、今回のおのじ通信は前回の“桜”に引き続き、これからの時期、鮮やかに彩られる町田小野路霊園の花のひとつ、ツツジに目を向けてみたいと思います。
万葉集でもやはりツツジは詠まれていて、一部分ですが載せてみます・・・
・・・竜田道の 丘辺の道に 丹つつじの にほはむ時の桜花 咲きなむ時に・・・
【高橋虫麻呂 巻六 971】
歌意-竜田道(たつたじ)に沿う丘の上に丹色(にいろ)のつつじが微笑みかけるように咲いている。ちょうど桜の花も咲こうとしているこの時期に。
桜と並ぶ代表花 “つつじ”
丹色(にいろ)とは、いわゆる赤土の色のこと。「丹」は、赤土の古語で「あか」とも読み、朱色が強い華やかな赤のイメージです。そんな赤いツツジが桜と並んで咲きにおっている。素敵な春の風景ですね。万葉時代にはまだわりと、ツツジのようにこじんまりしたシンプルなものが好かれていたのかもしれません。
歌は藤原宇合(ふじわらのうまかい)が九州に出発する際に家臣の高橋虫麻呂が送ったものですが、竜田道の丘の「道」というように、ツツジロードに丹色の花がたくさん並んでいる様子が強調されています。
歌に詠まれたのは主に野生のツツジではないかと考えられますが、樹木の丈や管理のしやすさから、現代においても街路や家の外回りに好んで植えられています。
実は、町田小野路霊園でもツツジロード程ではありませんが、4月末から5月の始めにかけて、せせらぎ区とやすらぎ区の間の壁一面、ツツジが微笑みかけるように咲きみだれます。この他にも町田小野路霊園には至る所にツツジが植えられ、園内はとても華やかに。
そしてこれからの季節、町田小野路霊園全体が新緑と草花に包まれ、より明るい霊園へと彩られます。今年は大型のGWもありますので、ご家族や知人の方と「万葉集」を片手に散策しながら、自然を身近に感じ、心を清めてみてもいいのではないでしょうか。