分骨して別のお墓に埋葬、その手順と注意点

分骨ってなに?遺骨を分けて別のお墓に収める理由

分骨は故人の遺骨の一部を分けて、別のお墓に納骨することです。一般的には2つの場所でそれぞれ納骨することをいいますが、最近は海への散骨や手元供養の場合も分骨の1つとして捉えられています。遺骨を分けるには大きく3つの理由が考えられます。

1、兄弟姉妹など、家族でそれぞれのお墓に納骨したい

離れて暮らしている兄弟姉妹が、それぞれのお墓で別々に両親の供養をしたいという理由です。通常の納骨先は世帯主家族のお墓ですが、故郷の兄弟姉妹からの要求で遺骨を分けます。事前に家族の話し合いで決まっている場合と、納骨後に分割するよう要求される場合があります。

2、 霊園が遠方のため、遺骨の一部を自宅近くの霊園で埋葬したい

遺骨を分ける最も多い理由はお墓と自宅との距離の問題です。きちんとお参りしてあげたくても、遠方に自宅があると難しくなります。年配の方は特に、お参りが大変な負担になってしまうケースもあるため、近隣の霊園や納骨堂に分けて収めます。より手厚い供養をしたいと故人に心を寄せる人達にとって、お参りしやすい環境を整えるための分骨です。

3、遺骨の一部を宗派の総本山に納めたい

古くから浄土真宗では宗派の方が亡くなった際に、遺骨の一部を本山に収めるという習わしがあります。宗祖への畏敬の意味を込めて行われており、故人の遺言や遺族の気持ちに従って現在でも分骨を希望される場合があります。故人の身体を引き裂くようで忍びない、成仏できないと感じる人もいますが仏教ではお釈迦様や各宗派の開祖の仏舎利を分けて様々な場所でお祀りされています。古くから行われてきたことなので、宗教的には何の心配もありません。

いずれの理由にしても、遺骨を分けることについて抵抗がある人が多いのも事実です。家族や親戚同士で感情的にこじれてしまうことは故人も願っていないことなので、よく話し合って決めましょう。

分骨のタイミングと手順

分骨を行うには、納骨前と納骨後の2回のタイミングがあります。それぞれのケースに応じた手続きの内容と手順を見ていきましょう。

まだ納骨されていない場合に関しての、埋葬前の分骨の手続きは、最初に葬儀社の担当に遺骨を分ける意志を伝えます。火葬場では通常、火葬の事実を証明する証明書を発行してもらいます。証明書は霊園管理者に提出し、お墓に納骨する流れです。遺骨を分割する意志を示した場合には、本骨には通常でも発行される「火葬許可書」、分骨には「火葬証明書(分骨証明書)」が必要とされます。遺骨を分ける為の骨壷は、自分たちで準備するか葬儀社を通して準備してもらいましょう。それぞれに遺骨を分け入れ、その後はそれぞれの霊園に書類を提出して納骨する流れになります。

既に納骨されている場合は遺骨を取り出して分割し、新しいお墓へ納骨しなければなりません。遺骨は法的には遺体の一部として扱われているため、埋葬には許可証が必要になります。家族の遺骨だとしても、勝手に取り出して分割したら新しいお墓へ埋葬することができないばかりか、死体遺棄罪として扱われることもあります。必ず所定の手続きをするようにしましょう。

1、 霊園の管理者に「分骨証明書」を発行してもらう

証明書は申請することで交付してもらえる書類です。書類の内容は現在の埋葬場所と分骨する場所とその理由が主です。もしも、遺骨を複数に分割したい場合は、その数だけ証明書を発行してもらう必要があります。

2、 墓石から遺骨を取り出す

証明書がもらえれば、霊園と提携している石材店に連絡します。遺骨を分割することを伝え、日程を決めましょう。遺骨を取り出す際には、お墓から魂を抜く「閉眼供養」をする必要があります。閉眼供養をすることで故人の魂が宿ったお墓がただの石になって遺骨を動かすことができるため、あらかじめ菩提寺に相談しておくようにしましょう。閉眼供養が終わったら、お墓からカロートと呼ばれる納骨棺を取り出してもらいます。閉眼供養とは別に、数万円の費用がかかる場合があるので手元に用意しておきます。

3、 分骨先の霊園管理者に証明書を提出して埋葬

分骨先の管理者に証明書を提出した後、遺骨を埋葬することができます。新しいお墓に埋葬する場合の骨壷は自分で手配する必要があります。遺骨を分割した後、本骨が収められている閉眼供養をしたお墓には、再び開眼供養を行います。お布施の金額は親族で相談して決定しますが、平均的な相場は1~5万円ですが、10万円ほどかかる場合もあります。

分骨の前に、確認しておきたい注意点

故人の遺骨を分けることは非常にナイーブな問題です。家族や親戚といえども、それぞれ考え方が違うこともあります。トラブルを防ぐためにも、注意すべき点は事前に押さえておきましょう。例えば、遺骨の分割は自分1人の意志で行えるものではありません。墓地の継承者が遺骨の所有者となるため、その所有者の承諾を得る必要があります。それ以外にも、親しい親戚がいる場合には、その人達の了解を得た上で手続きをしましょう。

遺骨の一部を本山に納骨する場合においても、いったん納めた遺骨はいかなる場合も返還されません。本山では合祀で遺骨を納められているため、多くの信者の遺骨が一緒にまとめられています。後から個別に取り出すことが不可能なので、抵抗がある人は遺骨の一部を手元に置いておくなどの方法を取る必要があります。

また、遺骨を分けて手元供養をする場合、証明書は必要ありませんが、後から納骨したくなった時に必要になります。手元供養を決めている場合でも、とりあえず証明書だけは取得しておきましょう。もしも後から必要になって書類が手元にない場合は、分骨前のお墓がある地域の自治体で再発行してもらうことができます。申し込みの際には、故人の氏名と亡くなった年月日、火葬日などが必要なので、メモを残しておくことが大切です。

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